マンション広告の「月々○万円」は本当の負担額ではない
マンションの広告やポータルサイトには「月々8万円台から」「月々10万円で都心のマンションが買える」といったキャッチコピーが並んでいます。しかしこの金額は、住宅ローンの返済額のみを示したものです。
マンションを購入すると、ローン返済とは別に管理費と修繕積立金が毎月かかります。この2つを加算すると、実際の月々負担額はポータルサイトに表示されている金額より2〜3万円高くなるのが一般的です。
なぜ「ローン返済額だけ」が表示されるのか
住宅ローンの審査では、返済負担率(年間ローン返済額 ÷ 年収)が重視されます。金融機関はこの計算にローン返済額のみを用いており、管理費・修繕積立金は審査上の返済負担率に含まれません。
そのため不動産ポータルサイトや銀行の住宅ローンシミュレーターも、ローン返済額だけを「月々の支払額」として表示するのが慣例になっています。SUUMO・HOME'Sなどの大手サービスも同様で、管理費・修繕積立金は「別途必要です」と小さく注記されるにとどまっています。
審査が通るかどうかとは別に、実際に毎月払い続けられるかどうかはまったく別の問題です。家計の実態を把握するためには、管理費・修繕積立金を含めた「実質的な月々負担額」で計算する必要があります。
管理費・修繕積立金の全国平均
国土交通省「令和5年度マンション総合調査」(2024年3月公表)によると、全国平均は以下のとおりです。
| 費目 | 全国平均(月額) |
|---|---|
| 管理費 | 約1万5,000〜1万6,000円 |
| 修繕積立金 | 約1万1,000円 |
| 合計 | 約2万6,000〜2万7,000円 |
管理費はマンションの共用部分(エントランス・エレベーター・廊下・駐車場等)の清掃・維持・管理会社への委託費用です。修繕積立金は外壁塗装・屋上防水・給排水管更生など大規模修繕に備えて毎月積み立てるお金です。
いずれもローン返済が終わった後も、マンションを所有している間はずっと払い続けなければならない費用です。
修繕積立金は将来「上がる」前提で計画を立てる
修繕積立金には、見落とされがちな重要な性質があります。新築時は低く設定され、年数が経つにつれて段階的に増額されるのが一般的だということです。
新築マンションの修繕積立金は月5,000〜8,000円程度に設定されることが多いですが、これは将来の大規模修繕費用を賄うには不十分な金額です。国土交通省のガイドラインでは竣工後5〜10年ごとの見直しを推奨しており、以下のタイミングで増額されることが多くあります。
- 築10〜15年頃:第1回大規模修繕(外壁塗装・屋上防水・共用設備更新等)に向けた増額
- 築25〜30年頃:第2回大規模修繕に向けた増額
結果として最終的に月2〜3万円以上になるケースも珍しくありません。購入時に月8,000円だった修繕積立金が、20年後に月25,000円になっていた、というのは実際によくある話です。
実質的な月々負担額を計算してみる
具体的な数字で確認してみましょう。
条件: 物件価格5,000万円、頭金500万円、借入4,500万円、年利0.5%(変動)、借入期間35年、管理費15,000円、修繕積立金11,000円
| 項目 | 月額 |
|---|---|
| ローン返済額 | 約116,000円 |
| 管理費 | 15,000円 |
| 修繕積立金 | 11,000円 |
| 月々の実質総負担額 | 約142,000円 |
ポータルサイトに「月々11万6千円」と表示されていたとしても、実際には月14万2千円の支出が発生します。年間にすると約31万円の差です。
さらに修繕積立金が10年後に月5,000円増額された場合、月々の総負担額は約147,000円になります。
実質返済負担率で考える
住宅ローン審査の返済負担率はローン返済額のみで計算されますが、家計の実態を正しく把握するためには実質返済負担率で考えることが重要です。
一般的に実質返済負担率は年収の25〜30%以内に収めることが安全とされています。
- 年収700万円(月収約58万円)の場合、実質負担率25%なら月14万5,000円以内。上記の例(月14万2,000円)はギリギリ収まりますが、修繕積立金が増額されると超過します。
- 年収600万円(月収50万円)なら、実質負担率25%は月12万5,000円以内となり、上記の条件では購入が厳しくなります。
購入前に確認すべき5つのポイント
マンション購入を検討する際に確認しておきたいことをまとめます。
-
1
管理費・修繕積立金の現在の金額 重要事項説明書に記載されています。月額いくらかを必ず確認してください。
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2
長期修繕計画書の内容 将来の修繕積立金の増額スケジュールが記載されています。10年後・20年後にいくらになるかを確認してください。
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3
修繕積立金の積立状況 管理組合の総会議事録や管理規約で、修繕積立金が計画どおりに積み立てられているか確認できます。積立不足のマンションは将来の一時金徴収リスクがあります。
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4
駐車場代の有無 機械式駐車場の場合、月1〜3万円程度かかります。利用する場合は負担額に加算してください。
-
5
管理組合の健全性 管理費の滞納状況・管理会社の変更履歴なども確認できると安心です。
まとめ:「ローン+管理費+修繕積立金」で計算する習慣を
マンション購入の資金計画を立てるときは、住宅ローンの返済額だけでなく、管理費・修繕積立金を加えた月々の実質総負担額で考えることが基本です。
さらに修繕積立金は将来増額されることを前提に、段階増額後の負担額も試算しておくと安心です。
出典:国土交通省「令和5年度マンション総合調査」(2024年3月公表)